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『ファーストラヴ』島本理生

直木賞受賞作。『ファーストラヴ』を読みました。
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女子アナの入社試験を受けた美人女子大生が、試験の帰りに父親を包丁で刺殺。その容疑者の女子大生である聖山環菜の本を執筆することになった臨床心理士の真壁由紀の視点で小説は進みます。

題材的に目を引きますが、わたしは「救い」のある小説だと思いました。なぜなら、わたしが「救われた」から。

推理小説ではないので、殺人事件自体ではなく、なぜこの事件が起こったのかということを真壁由紀が臨床心理の観点で過去にさかのぼり調査していきます。彼女の心の奥底にある怒り、悲しみ、とまどいはどこから来るのか。
真壁由紀自身の過去と、聖山環菜の過去が、交互に差し挟まれ、マスコミが面白おかしく書く記事には表れない事実が浮かび上がります。

わたしが「救い」と思ったのは、まるで自分がセラピーを受けているかのごとく、ふたりの過去と同時にわたし自身の過去の出来事を思い出したからです。小説の進行と同時に次々思い出して、「あー、わたしもあの時、このことに怒ってたんだ、悲しかったんだ」と、子供の時には理由もなく辛いと思った出来事に理由付けが出来たから。

子供の時の悲しかった出来事がとんちんかんな怒りとして自分の奥底に眠っていて、それがまたとんちんかんな方向に噴出していたということに気付けたのです。

解決してすっきり(!)というわけにはいきませんが、なぜ今、大人になった自分がこう感じてしまうのかということの原因に気付くことで、これからの自分はもう少し自信を持てるのではという少し未来が明るくなった気がするのです。
抽象的で申し訳ありませんが。

「他人の痛みの前に、あなた自身が、自分の痛みを感じられてる?」
と真壁由紀は問います。
自分がないから他人がない、自分と他人の境界線がないのです。わたしはそんなことにも気付いていませんでした。

小説の内容はとても重いです。気付かないうちの「虐待」。誰を責めることもできません。

登場人物はちょっと漫画チックです。名前も容姿も。主要人物はみな美男美女。真壁由紀の旦那さまである我聞さんなんて全女性の理想の化身のような人です。「こんな人いるー??」。いません。

けれど、内容がとても深刻なので、この漫画っぽい登場人物のおかげで救われます。そこまで配慮されているのだと思います。そうでないと、ちょっと引きずられて立ち直るのに時間がかかりそうです。



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関西在住のアラフィフ会社員です。
「のんびりゆったり楽しく暮らす」生活に憧れています。今はまだ修行の日々です。

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